教員や指導者に求められる力    

 
・子どもたちをホールドする力
 ・子どもたちどうしの関係性やルールをつくる力
 
・子どもたちに気づきを引き起こす力
 ・子どもたちの気づきに気づく力
 ・子どもたちへ介入(支援)する力
 ・子どもたちの中で起こったことをとりあげる力
 ・授業でビルドアップされた気づきを大切にする力
ご質問はブログへ

3)子どもたちに気づきを引き起こす
 授業の中に組み込んだ様々な「しかけ」により、子どもたちは今の自分の行動やあり様に気づいていきます。さらに、まわりの仲間の行動やあり様や、まわりから返ってくるフィードバックにより、気づきは深まり、子どもたちの変容のきっかけとなっていくのです。このような気づきを引き起こすことのできる授業である必要があります。

***********************************************

 ウォーミングアップやアイスブレーキングを経て、いよいよ、授業の本題へと入っていきます。授業のはじめのインストラクション(Yahoo辞書)において、ねらいを共有したり、授業の手順やルールを子どもたちに提示していくのですが、授業がうまくいくかいかないかは、子どもたちに様々な「気づき」や深い「気づき」をいかに起こさせていくかといくことにかかっています。子どもたちの「気づき」を、子どもたち自身が言語化し、まわりと「気づき」を共有していくプロセスを通じて、子どもたちの中に「認知」として生まれ変わっていくのです。「認知」は「行動」の源であり、「評価」の軸になるものです。つまり「気づき」は人間の成長のプロセスにおいて、欠かすことのできないはじまりの一撃であるのです。
 この「気づき」を教員の保護下のもとに、授業の中で引き起こさせます。例えば、ストレスマネジメントの授業の時などでは、常識的に考えると到底できないような課題を与えて、プレッシャーをかけ、子どもたちにストレスを生じさせます。人間関係学科のひとつの原則は子どもへの課題はユニバーサルデザイン(Wikipedia)に基づいたものでなければならないので(子どもが今現在もっている力によって、大きく差を広げるものであってはいけないということ)、実際には、子どもたちが課題に取りかかる寸前で止めます。そうやって引き起こしたストレスの一人ひとりへの表れ方のちがいから「気づき」を導いていくのです。すると、「(出された課題を)やらないんだ。」ということを知って、子どもたちの心の中に、「(やらなくて)ホッとした。」という感情が生まれたグループと「(やらなくて)残念だった。」という感情が生まれたグループというように、大きく二つに分かれることに気づくのです。感情に対処する力が「ない」とか「ある」とかということは、どいうことかと言うと、実は、心の中で起こった感情というものを、その時点では、普通、人はいちいち確認したりしたり自覚したりしていないのです。人間は「刺激」→「感情」→「行動」というプロセスで刺激に対する反応をあらわすのですが、「刺激」と「行動」の間にある「感情」に対処するスペースが「ある」か「ない」かで、「行動」が違ってくるのです。「刺激」によって生まれた「感情」を自覚し確認するというスペース(時間が長いとか短いという概念ではなく、意識しているスペースがあるか、ないかという概念です。)をしっかりとるということが大事になってくるのです。ですから、人間関係学科の授業においては、あえて「刺激」を与え、そこから生まれた「感情」をしっかりつかみ、確認する訓練をするわけです。すると、子どもたちは「刺激」と「行動」の間にスペースをつくらないと、それこそ「感情的」な行動をとってしまう自分というものに気づいていきます。ですから、自分の中に、今どういう感情が生まれているのかということをしっかりと確認し、その感情を言語化して客観化することで、生まれた感情を、「何も恥ずかしいことではなくて、こういう感情を生み出しているのが自分自身なのだ。」というように、自分の感情を自分自身の姿として、客観的に受け容れることができるようになっていくのです。このプロセスはすべて「気づき」ということからスタートしているのです。「気づき」がなければ、行為自体を好ましいものに変容させることはできません。
 同じように、あいさつやマナーなどを扱うソーシャルスキルトレーニングや、もめ事解決などを扱うアサーショントレーニングなどで行うロールプレイングなんかも、この気づきを大切にしながら「認知」→「行動」→「評価」という成長のプロセスに子どもたちをのせていくことになります。もちろん、自己信頼の力を養っていくトーキング系のエクササイズにおいても、自己概念をひろげていくということの源には「ああ、そうなんだ。」という気づきがベースになってきます。つまり、人間関係学科のすべての授業が「気づきベース」でつくられているのです。
 つまり、子どもたちに「気づき」を起こさせるために、アイスブレーキングを含めた場づくりの段階からメインのエクササイズに至るまで、様々な「しかけ」を授業の中に散りばめていきます。子どもたちに「気づき」を起こすことができない授業は、人間関係学科の授業であるとは言えないのです。


***********************************************