中学校1学年第2時「なんでもキャッチ」 コミュニケーション基礎 (Wordバージョン)

 15人〜20人のグループで椅子にすわって円になります。ルールは、ボールを持っている人が相手の名前を呼び、呼ばれた相手は「はい」と返事をします。その返事を聞いてから、名前を呼んだ相手にボールを投げます。名前を呼ばれた人は、そのボールを受けとります。このやりとりが全員にまわりきれば終了です。たったこれだけのことなのですが、なかなかうまくいきません。同じ人に投げてしまったり、ボールを受け取れなければ「アウト」です。「はい」という返事を待ちきれずにボールを投げてしまったりしても「アウト」です。またはじめからやり直します。

 終了後、ボールをうまくまわしていくためにどんな工夫をしていたのかふりかえります。「相手が受けとりやすいところに投げた。」「相手の目を見て投げた。」「ちゃんと受けとれるように、手をさしのべていた。」「ちゃんとはっきりと返事をした。」等々。エクササイズの最中に「おしゃべりをしてはいけない」というルールはありませんので、「おしゃべりをしてもかまいませんよ」と言ってあげると、「まだボールをもらってない人」と尋ねたり、ボールを受けとっていない人が手を挙げたり、すでに受けとった人が手で×をつくったりします。このようなことをファシリテータは、場で起こっていたこととしてかえしていきます。ほんとうは「ボールは言葉(コミュニケーション)と同じだと思った。」というふりかえりがほしいところですが、別に出てこなくてもかまいません。それは、感じて語られたふりかえり自体が、コミュニケーションに関わることになっているからです。ふりかえり用紙に書いていただく段階で、子どもも大人もそういうことを書いてくれます。
ボールを扱うのが特別苦手な子どもや、ハンディをもつ子どもがいる場合には、パーソナルルールを決めてください。子どもたちからパーソナルルールを提案してくることもあります。
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                                     「なんでもキャッチ」に関してご質問・コメントをお受けいたします。→ブログリンク


【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 


【ねらい】 コミュニケーション基礎
 コミュニケーションの基本は、お互いが相手をしっかりと受けとめるということからはじまる。言葉は目に見えないが、「じゃんけん」や「ボール」を言葉に見立て、じゃんけんをしたりボールを投げたりすることで、コミュニケーションの疑似体験を行う。じゃんけんやボールを使ってコミュニケーションを可視化するのである。言葉を投げかけたり、受けとめたりするうえでの大切な事に気づいていく。


【概要】
 『あとだしじゃんけん』では、勝つことには慣れているが、負けることには無意識の抵抗があるために間違ってしまう。相手の手をしっかりと見るということが大切になってくる。『なんでもキャッチ』は15人〜20人くらいがやりやすい人数である。人数が多い場合は学級を二つのグループに分け、教員が必ず各グループの中に入ってリードしていく。ボールを投げる人が「〜さん」と名前を呼び、名前を呼ばれた人は「はい」と答える。そしてはじめてボールを投げることができるのである。はじめは乱暴に投げていた子どもも、うまく受け取ってもらうにはどうしたらよいかに気づきはじめる。失敗を重ねて、なかなか全員にまわらないボールも、最後まで到達できたときには、子どもたちから歓声があがる。

【ポイント】
 非常に活動的な子どもいれば、活動が苦手な子どももいるので、教員がしっかりとルール説明をし、厳格なルールのもとで行うことが肝心である。生徒どうしのキャッチをOKにするかアウトにするかちゃんと判定することが重要。椅子のみの活動で、ボールを使うというエクササイズであるので、しっかりとした場づくりが要求される。教員も輪の中に入って、ジャッジしながらもいっしょに成功させようという立ち位置が望ましい。


【子どもの気づき】
・クラスのチームワークがよくなったと思ったし、仲もよくなったと思った。周りのことを考えないと成功しないゲームだと思った。生活の中でも人のことを考えたり、見通しをもって生活したい。
・大きな声を出さないといけないなと思った。よそ見せず,物を持っている人をしっかりと見ないといけない。
・ボールの投げ方とコミュニケーションの取り方が一緒だと思った。


【教員からのコメント】
初めて相手の名前を呼んだという生徒もいて、とてもよい機会になりました。大きい円になった方が気づきが多かったように思います。ボールを投げ、それを受け取るというだけの授業ですが、深い気づきを得ることができたようです。タワシを使った「なんでもキャッチ」は、トゲのあるたわし=きつい言葉というイメージを簡単に持つことができたようで、やさしい言葉かけの意味が伝わったようです。

【模擬授業で気づいたこと】
先日(2017.5.8)、奈良女子大の学生さんを相手に「なんでもキャッチ」を行いました。現場の先生方から、「ボールを言葉に例えているというふりかえりが出ないときがあるのですが・・」というお悩みをよくお聴きします。別に、ふりかえり&シェアリングの段階でそういう発言が出なくても、ふりかえり用紙に文章化したときに出てきますし、仮にそのようなふりかえりが出なくても決して失敗ではありません。
それでは・・・ということで、今回の模擬授業では、

@ボールがまわるように工夫したこと
Aボールを何かに例えると・・
B全体を通じて感じたこと

という柱でふりかえりをしました。すると、「言葉」というふりかえりはもちろん出てきたのですが、他にも「感情」とか「人柄」とか様々なものが出てきました。参加者の発言を期待するのもいいですけど、はじめからふりかえりの枠組みとして入れていた方が、多様性がよく見えるかもしれないですね。
学生さんのふりかえり(ブログのコメント)


【おまけ】 
「なんでもキャッチ」を経験したら、次の機会に
「だまってキャッチ」というエクササイズをやってあげましょう。ルールは「一言もしゃべらずに、全員にボールをまわす。」というものです。非言語的表現が際だった動きになります。コミュニケーション発展に入っていく2年生一学期くらいのウォーミングアップとしてやってみてはいかがですか。「だまってキャッチ」の場合は指導者は輪の外にいたほうがいいようです。
先生たちの模擬授業で実験してみましたのですが、「時間を短縮するにはどういう工夫をすればいいか?」という課題を出すと、いろいろ意見が出てきました。すべてコミュニケーションを好ましいものにすることに関わることだったので、気づきが多かったですよ。