中学校2学年第3時「あいうえおロールプレイング」 コミュニケーション発展 (Wordバージョン)

 アサーション(アサーティブネス)への理解を深めていく授業です。前時に引き続いて非言語表現への理解になるのですが、コミュニケーションにおける相手の言語を「あいうえお」に代えてしまうことにより、言語表現をゼロにしてしまうとどうなるか、という授業なのです。言語表現をゼロにしてしまうと、表情、身ぶり手ぶり、声のトーンなどに情報が限られてしまいます。しかし、非言語表現だけでも観ているほうからすれば充分わかるよね、ということに気づきます。そして、それだけでなく、攻撃的な姿、受け身的な姿に比べるとアサーティブな姿というものは、非言語的表現が豊かであることがわかります。なかなか、そこまで気づくことができる子どもは少ないのですが、教員にとっては、重要な要素であることに気づいていただきたいものです。教育にはモデル性というものがあって、大人の姿というものは、わたしたちの想像以上に子どもたちに影響を与えているのです。非言語表現を大切にしている教員のもとでは、非言語表現を大切にする子どもが育ちます。
 アサーティブネスで最も大切なことは「自分自身を大切にしているか」ということです。ここで誤解してはいけないことは、利己的な「自分中心の考え方」とは、正反対のものであるということです。「自分自身を大切にしている」ということは、常に自分自身と対話し、自分自身の気持ちを確かめるということが基本です。利己的で自分勝手な人とは、強者には弱く、弱者には強いのです。そのために、自分自身の気持ちに謙虚であることはできません。常に他者との力関係(勝か負けるか)が基本になるからです。この授業でいえば、攻撃的な人、受け身的な人の姿であるといえます。自分自身の気持ちを常に自問自答(対話)して確かめている人は、他者に対しても気持ちを確かめる努力を怠りません。相手の気持ちを想像しようとする共感性をもっているのです。訊いて、聴くという行動力を持ち合わせています。ですから、非言語表現も豊かであるといえるでしょう。
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【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.活動の流れ
2.ワークシート

【ねらい】 コミュニケーション基礎
 コミュニケーションにおいては、音声言語以上に表情や身ぶりなどの非言語的表現が果たす役割が大きいことを「あいうえお」のみで表現するロールプレイングを見ることで気づく。


【概要】
 進行役1人、演者4人の教員によるロールプレイングなので学年全体(学年集会)で行う。アサーションの第一の基本は、自分自身の感情対処をしながら相手を受けとめることである。そのために、どんな言葉を受けとっても「そうだね」と返し、自分の中に落とし込んでいく。今回のメインは、一年時に取り組んだアサーションロールプレイングを非言語的表現で返していくというものである。生徒Aと生徒B・C・Dそれぞれとの会話のやりとりを観察する。しかし、生徒B・C・Dが発する言葉はすべて「あ・い・う・え・お」である。生徒B・C・Dの非言語的表現(表情、態度、身振り)がコミュニケーションに占める位置がどれくらいあるのかを考えることができる。生徒Bは攻撃的表現、生徒Cは受身的表現、生徒Dはアサーティブな表現で教員が演技を行う。

【ポイント】
 1年に学習したアサーションへの理解を深める授業である。この授業では、非言語的表現を使うことで、攻撃的表現、受身的表現、アサーティブな表現というものは、音声言語以上に「あり様」というものの重要さを感じてもらうものである。三つの立場を強調して教員が演じることにより、アサーティブな「あり様」の大切さを時間する。子ども自身が自分の「あり様」というものをふり返ることができる授業である。


【子どもの気づき】
・「あいうえお」の言葉だけでも、表情や言い方で伝えたいことがちゃんと分かるんだなと思いました。自分もDさんみたいに答えられるようになりたいなあと思いました。
・自分が変われば相手も変わるんだなと思いました。
・アサーションを意識して言うと、相手も自分も気持ちよい方向に向かうと感じました。
・たぶん、たいていの人がBさん、Cさんだと思う。Dさんのような優しい人がたくさんいたらけんかなんか起きないと思う。Dさんのように、心が広い人になりたいと思いました。


【教員からのコメント】
・ロールプレイングは子どもに場面や感情をイメージさせるのに効果的でした。極端な演技をすることで、子どもにうまく通じるのですね。せっかくの熱演だったので、中学生の制服か体操服を着て演技してもよかったのかもしれません。アサーティブな姿の大切さについて「自分たちの生活に関係がある」と応えている子どもが多く、自分たちのよりよい人間関係づくりに興味が持てたようです。ゲーム的なものだけでなく、今回のように知的理解や気づきを楽しいと感じている生徒もいるので、その雰囲気を広げていきたいと感じました。


【参考】
「人間関係を豊かにする授業実践プラン50―自分を見つめ好きになる本」 (教育技術MOOK)
 出版が1997年なので古本でしか入手できないのですが、アサーティブネスを育てていくという観点では非常に秀逸な支援プラン&ワークシート集です。「あいうえおロールプレイング」は、この本の「アイウエオ語で自分の気持ちを表現しよう」というプランを参考にしています。この書籍はオーストラリアのエリザベス・キャリスターさんたちの「ME YOU and OTHERS」という本を参考にしてつくられています。日本語版は国際理解教育センター(ERIC)が出している「わたし、あなた、そしてみんな」です。どちらも古本なのでタイミングがよければ手に入れることができます。1995年から発効された国連の「人権教育のための国連10年」の考え方をベースにしています。自尊感情(セルフエスティーム)を基本にして共感性を育てていくためのアイテムとして大いに活用できます。