【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.子どもたちへの課題台本
2.絵の画像

【ねらい】 コミュニケーション基礎
 コミュニケーションがうまく取れるかどうかは、お互いが交流できるかどうかというところにある。それは、お互いが相手にベクトルを向け、インプットとアウトプットをくりかえす作業を通じて、考えやイメージを共有することができるのである。2枚の絵を描くことで、双方向のコミュニケーションがいかに大切であるかに気づいていく。


【概要】
 『しりとり』は、昔ながらの遊びのツールであるが、文字をつうじて繋がっていくことの心地よさを感じることができる。メインEXでは、2枚の絵(「夏の日の風景」「南国の島」)を教員の指示のもとに描いていく。お題は、「教員が見ている絵と同じ絵を描いて下さい。」というものである。1枚目の「夏の日の風景」では、質問を一切受けつけない。すると、子どもたちの絵は、個性豊かな違いが際だった絵になる。2枚目の「南国の島」では、質問することが許される。「わたしが見ている絵と、まったく同じ絵を描いてね。」ということを強調しておけば、質問が出やすい。完成した2枚の絵をそれぞれ班の中でシェアしていけば、同じイメージをもつためには質問する(訊く)ということの大切さと双方向のコミュニケーションの有用性に気づいていく。

【ポイント】
 子どもは絵の出来、不出来を気にしてしまうので、全くそれは関係ないことを強調するだけでなく、「それぞれの絵が個性的である」ということを念頭に置いてフィードバックを返していけば、
子どもたちは伸び伸びと描くことができる。1枚目を終えたときに、どうしたら教員が見ている絵に近づけるかを話し合わせて2枚目に質問が出やすくするとよい。


【子どもの気づき】
・1枚目はどこに何をかいていいのかわからなかったけれど、2枚目は質問してもよかったのでかきやすかった。
・1人1人違う絵を描いていて、十人十色だなあということを発見しました。
・質問しないという条件だけで、正確に理解することの難しさを感じました。普段の会話でも相手の一方的な話だけで分かろうとするのでなく、自分の方からも問いただしたりして、理解を深めていきたいです。


【教員からのコメント】
・「気づき」が多く生じる優れたエクササイズだと感じました。普段、しゃべっていると、人の話を聞いているつもりでも、案外、自分がしゃべることに集中していて、聞いていないことがあります。コミュニケーションは少なくとも、しゃべると聞くとが半分半分が理想だと思いますが、結構、聞けてないなということに気づいていきます。まず、コミュニケーションという信号をしっかりとつかんでいくことが、次の段階である心から「聴く」というステージに昇ることができるのではないかと思いました。



【参考】
南山大学、星野欣生先生の「人間関係づくりトレーニング」金子書房(amazon)です。わたくしは、人間関係プログラムに関わりはじめた時期に読ませてもらいました。「南国の島」はこの書籍に紹介されている「流れ星」をアレンジしたものです。当時の松原第七中学校の若手教員に「南国の島」の絵を描いてもらいました。この書籍からは、人間の成長の基本とも言える「自己概念」の考え方や、「共感性」の概念の理解に通じることを学びました。人間関係プログラムの基本を理解するための書であります。
「南国の島」 コミュニケーション基礎

 コミュニケーションの基礎といえば、どういう点が上げられるのでしょうか。自分と相手(コミュニケーションの対象)との間にどういう要素が必要なのかということになります。「話す」という行動に焦点をあてた場合、「話し手」に必要なこと、「聴き手」に必要なこと、双方の関係性に必要なこと、ということがあげられます。前時の「なんでもキャッチ」においては、ボールというコミュニケーションのコンテンツに対して、投げる側は、「やさしく」「目を見て」「捕りやすく」投げる。受けとる側は「目を見て」「構えて」「呼び込んで」受けとる、ということに気づきました。今回の「南国の島」では、双方の関係性に目を向けます。人間はそれぞれ個性的な存在ですので、それぞれがもつ自己概念というものも個性的なわけです。ある一つの情報を得ても、そこからつくりあげる自己概念というものも個性的で多様なものになります。何か一つの作業を共同で遂行しなければならないというとき、それぞれの自己概念(イメージ)というものがバラバラであったとしたら、それは自然なことなのですが、共同作業はうまくいきません。自己概念(イメージ)を共有化する必要に迫られます。そこで必要な行動が「訊いて聴く」ということなのです。「訊いて聴く」とは、簡単に言えば「質問して、回答をもらう」ということになります。この「訊いて聴く」という行動がどのように、自己概念(イメージ)の共有に効果があるのかということに気づくための授業が「南国の島」です。質問が許されない「一方通行」のコミュニケーションでは、それぞれが個性的な絵を描くのですが、質問が許されイメージの共有化が図られたなかでは、それぞれが同じようなイメージを共有できる、ということがわかってきます。
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