人間関係学科 とは
    
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(文科省研究開発学校として)
 
松原第七中学校では、2003年〜2005年にかけて、文科省研究開発学校の指定を受け、人間関係づくりのための授業、人間関係学科(Human Relation Studies 略称HRS)の創設と、不登校生等が学校復帰するための支援に取り組んできました。さらに、2007年〜2009年にかけては、中学校区として校区の恵我小学校・恵我南小学校、さらに恵我幼稚園も含めた11年間の人間関係づくりのための授業、人間関係学科(幼稚園・小学校―「あいあいタイム」、中学校―「HRS」)を子どもの発達段階に応じたカリキュラムとして作成し、校区としていじめ・不登校の未然防止のための支援体制を確立しました。その結果、「学校が楽しくなれば、ストレスが減る ストレスが減れば、不登校やいじめが減る」というパラダイムのもと、不登校生の減少といじめの未然防止という観点からの成果をあげてきました。

(社会の変容と子どもの危機)
 2008年のリーマンショック以降、労働人口の3分の1を占めていた期間労働者に対する「派遣切り」というものが行われました。それを象徴として、厳しい生活実態の深刻化が進行しています。また、今の社会が高度情報化社会へ移行していくうえでの弊害として、個人の成長における内的な空洞化が顕著となり、情報化社会における人間形成の面から様々な新しい問題が子どもたちに降りかかっています。そういうことを一因として、家族の形態も多世代同居の時代から核家族化へ、さらには、家族の一人ひとりが切り離されていく個族化の時代へと変わりつつあります。この社会の大きな変容の結果、全国の不登校生の数が1998年には12万人を突破し、以後現在に至るまで2001年の13万9千人を頂点にして12万人を下回ることは一度もありません。1991年には6万7千人だったことを考えると、数字の上では約1.9倍、出現率においては2.3倍にも増えています。2010年7月、15才から39才までの人たちの中には、ひきこもりが疑われる人たちが70万人、その傾向にある人が155万人という数字が内閣府から発表されました。その年代の人口比からすれば5.8%にもなる数字なのです。また同じ時期に、全国の児童相談所における相談件数が4万4千件を超え、過去最高の相談件数となったことも立て続けに報道されました。社会における虐待の意識が高まってきたことで、相談件数が増えてきたということは一定言えるのですが、1998年までは1万件以下であったことを考えると、件数自体がそれ以上急速に増大していることがわかります。つまり、1990年代中盤を境にして、社会全体の枠組みが大きく崩れ、その影響として生活の崩壊と家族の崩壊につながっているということではないでしょうか。人間形成において、これまでにない危機的な状況が子どもたちを襲っていると言っても過言ではありません。今の時代は学校が何もしなければ、子どもたちは大変なことになってしまう時代となっているのです。

(グループアプローチからガイダンスカリキュラムへ)
 1960年代後半から1980年代にかけて、構成的グループエンカウンターやアサーショントレーニング、グループワークトレーニングなどの老舗とも言うべき学校教育で生かすことのできるグループ・アプローチが成立しました。そして、2000年頃までに、プロジェクトアドベンチャー、ライフスキル教育、ストレスマネジメント教育、ソーシャルスキル教育、ピア・サポートプログラム等のグループ・アプローチ(集団での体験を通じて、人間的な成長を促す学び)が次々と生まれたのです。それを受けて、2005年以降、グループ・アプローチの成果を生かした学校教育レベルのガイダンス・カリキュラムが教育委員会や教育センターあるいは学校単位で作成され実施されてきました。行政レベルでは、さいたま市HRTプログラム、体系的指導プログラム(いきいきちばっ子プラン)、子どもの社会的スキル横浜プログラム等が、学校レベルでは、埼玉県上尾西中学校区の社会性を育てるスキル教育や松原市立松原第七中学校区の人間関係学科(小学校「あいあいタイム」、中学校「HRS〔Human Relation Studies〕の略)」)等があります。

 松原第七中学校区では、幼稚園・小学校・中学校にわたる11年間のガイダンス・カリキュラムを作成し実施してきました。


(ガイダンスカリキュラムとしての人間関係学科)
 松原七中の人間関係学科は「参加体験型」の授業です。様々なグループ・アプローチのエッセンスを取り入れ、主に「ソーシャルスキル」「出会いと気づきの力」「アサーティブな人間関係調整力+人間力」を育成していくものです。そして、その手法はファシリテーションに基づいた人間の主体形成にあります。つまり、子どもたちに起こった「気づき」を子どもたちが自己認知し、さらにそれを共有化することで、子どもたちは人間的な成長を成し遂げていくことになるのです。「認知」(わかる)→「行動」(やってみる)→「評価」(感じ方)というプラスのスパイラルを描いて、子どもたちの中に根づいていくことをねらいとしているのである。授業内容は、12のターゲットスキルに基づいた5つのパッケージで構成し、それぞれの授業が、「日常性」=普段の生活に生かすもの、「テーマ性」=テーマを絞って学ぶもの、「クロス性」=行事や取組にリンクしたもの、という3つの要素をもたせているのです。そして、最終的には人間の生き方として「依存的なあり様」の生き方を克服し、「主体的なあり様」の生き方をめざしていくものとなっています。