【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.じゃがいもシート(じゃがいもの自己紹介例)

2.じゃがいものかぶりもの画像その1
3.じゃがいものかぶりもの画像その2
4.じゃがいもハウスの飾りものイラスト



【ねらい】 自己開示
 中学校入学直後、希望と不安にあふれた子どもたちへの人間関係プログラムの初披露である。
教員のモデリングを通じて、子どもたちに自己開示することの楽しさや心地よさを体験してもらう。じゃがいもになりきることにより、容易に自分自身の新たな個性を発見し、他者の個性に出会うことができる。


【概要】
 教員のモデリングからスタートする。じゃがいものかぶり物をつけた二人の教員によるモデリングである。会話の内容は二人のじゃがいもの出会い。夢を語ったり趣味を語ったりする。自分に関する事実をしゃべる必要はない。あくまでもじゃがいもとして会話をする。じゃがいもをしっかり見つめ、観察をし、会話が始まる。子どもたちは何が始まったのかと、驚きを隠せない。しかし、配布された自分のじゃがいもを見つめ、語りはじめるじゃがいも(子ども)たちの個性は豊かだ。グループでの自己開示後、ナイスなじゃがいもさんに全員の前で語ってもらうのが良い。終了後、全員のじゃがいもを集め、ひとりずつ自分のじゃがいもを探してもらう。すると、不思議なことに、子どもたちは自分のじゃがいもを探し当てることができる。

【ポイント】
 じゃがいもに自分を投影したものを開示することで、自己開示のハードルを低く設定している。しかし、自分を投影するという作業は、普通に自己開示をするよりは個性があふれ出るので、想像以上におもしろい展開になる。教員はモデリングにおいて、絶対に恥ずかしがってはいけない。教員自身の自己開示のためのモデリングが重要なのである。


【子どもの気づき】
・じゃがいもになりきって自己紹介するのは緊張したけど、できてよかった。同じ班の人はいろいろな夢を言っていておもしろかった。
・じゃがいもの特徴を探すのはすごく楽しかった。世界に同じ形のじゃがいもがひとつもないから、自分のじゃがいもは大切に食べたい。
・じゃがいもと同じように、観察したら友達のいいところがわかるという発見があった。


【教員からのコメント】
・先生方のじゃがいもが登場したときの子どもたちの表情・空気の流れの変化には驚きました。恥ずかしがったりしている生徒、どうしようかな…と困っている生徒などいろいろな生徒の姿を見ることができたと思います。この授業に取り組んでからは、班活動で会話が飛び交うような状態になりました。終わりの反省会なども、活発に意見交換できるようになりました。「じゃがいもになりきる」というだけの授業なのですが、このエクササイズの力というものを実感することができました。じゃがいもを家にもって帰って大事に育てるという子どももいて、じゃがいもをいとおしそうに見つめる子どもたちの眼が印象的でした。

【解説】 自己開示
 p22 テーマ解説「自己開示」を参照して下さい。
 自己開示の授業は、共感性を育てていくための重要なツールです。「総合的な学習の時間」などで人と出会い学ぶことを通じて、自分の生き方を探っていくということが大きな目的としてあるわけですが、自己開示の授業はそのための基礎をつくります。また、それだけでなく、普段の日常生活において、他者と折り合いをつけようと思えば、「相手の気持ちを想像しながら主張し」「相手の主張を受けとめる」ことが必要になります。共感性は、ここで力を発揮します。いじめや不登校などの事象を支配している「決めつけ」「固定観念」を打破する力でもあります。
 自己開示の授業には、@わたしのじゃがいも、Aさいころトーキング、Bすごろくトーキング、Cルーレット・トーキング、Dガラガラトーキング、Eすごろくトーキング&ドゥーイング、などがありますが、本書では@、C、Eを収録しています。一学期に一回は実施してあげたいものです。また、すべての授業で行われる「ふりかえり&シェアリング」は、自己開示をもとにしていますので、プログラム全体において、自己開示の力は養われていくことになるのです。


 すごろくトーキングシート
(じゃがいもハウスの建設)
 じゃがいもを教室に持っていくのに、スーパーの袋ではなぁ! ということで、じゃがいもを入れるための「じゃがいもハウス」を建設しました。場所は高知県四万十市立下田中学校です。岡崎哲也校長先生がお隣のまち土佐清水市の清水中学校へ転勤が決まっておられたので、下田中学へ3軒、清水中学へ4軒の計7軒をつくりました。ついでに、じゃがいものかぶり物もつくりました。完成後、かぶり物をかぶってハウスとともに記念撮影。

 材料は、更紙の箱。B4の大きさが一番適した大きさです。屋根にはカラフルなコンパネを貼りつけ、壁は色画用紙で装飾、ドアや窓のイラストも貼りつけます。2014年3月に建設したじゃがいもハウスは、元気にじゃがいもを子どもたちに届けてくれています。

余裕があれば、ぜひつくってあげてください。

 じゃがいもハウスの飾りイラスト
中学校1学年第1時「わたしのジャガイモ」 自己開示 (Wordバージョン)

 自己開示の授業はトーキング系の授業と呼ばれています。「さいころトーキング」「すごろくトーキング」「ルーレット・トーキング」「(ビンゴマシンを使った)ガラガラトーキング」「すごろくトーキング&ドゥーイング」など、さまざまなパターンで取り組むことができます。ねらいは、「自己認知の強化」と「共感性の育成」です。思い込みや固定観念は、人間の成長を阻害するだけでなく、人間関係の難しさをまねいてしまいます。子どもは未成長であることは当然なので、人間関係に難しさを抱えていることも当然のことであると言えます。なので、意識的かつ意図的に教育課程の中に、「聴き、話す」活動を取り入れていかねばならないのです。しかし、そういう活動は部分的・限定的にしか保障されていないのが現状であり、派生的な産物としてくらいにしか捉えられていません。コミュニケーションに難しさをもった大人が多いというのもコミュニケーションについて学んでこなかったが故に当然のことです。ですから、授業として「聴く、話す」作業を中心にすえた自己開示を授業として実施する必要があるのです。

 「わたしのジャガイモ」は、ジャガイモになりきる・・という一風変わったトーキング系の授業ですが、中学校入学直後には適した自己開示です。自分自身のことを語る必要はありません。ジャガイモとして話せばいいだけです。しかし、それだけでも、じゅうぶんにその子ども自身の個性というものを自己開示していることになるのです。

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